評価損とは
交通事故によって損傷を受けた車について、修理がなされても、外観や機能に欠陥が生じたり、または事故歴・修理歴があることにより、中古車市場における価格が事故前に比べて下落する場合があります。このような、事故当時の車両価格と修理後の車両価格との差額(価値の減少分)を評価損といいます。
評価損の特徴
技術上の評価損
修理によっても外観や機能に欠陥が残る場合に発生します。これにより、事故後の市場価値が下がります。
取引上の評価損
事故歴があるために市場での評価が下がることから生じます。たとえ修理が完了しても、事故歴があることで買い手から敬遠されることがあります。
評価損を請求できるケースとできないケース
評価損を請求できるのは、原則として車両の所有者です。以下に、評価損を請求できる主体とその条件を整理します。
評価損を請求できる主体者
車両の所有者
評価損が認められる場合、評価損を請求できるのは原則として車両の所有者です。所有権を有していない使用者は、原則として評価損を請求できません。
合意による使用者
車両の所有者と使用者との間で、評価損についての損害賠償請求権を使用者に帰属させるという合意があれば、使用者でも評価損を請求できます。
一括購入またはローン完済の車
現金一括で購入したり、ローンを完済した場合は、車検証に登録されている所有者が評価損を請求できます。
所有権留保特約付きの車両
ローン中の場合、金融機関が所有権を留保しているため、使用者は評価損を請求できません。ただし、金融機関との合意があれば可能です。
評価損を請求できない場合の例外
修理費用が時価額を上回る場合
修理費用が交通事故時点での車両の時価額を上回る場合には、評価損は請求できません。
具体的な障害が認められない場合
修理後に外観や機能に欠陥が残っていない場合や、事故歴による市場価値の低下が認められない場合には評価損は認められません
リース契約の車両
リース契約の場合、リース会社が所有者となるため、使用者は評価損を請求できません。
評価損を相手に請求するには?
評価損を相手に請求するためには、以下の具体的な手順を踏む必要があります。
評価損の理解
評価損とは、交通事故によって車両の価値が下がったことを指します。
修理後も事故歴が残ることで、将来的な売却価格が低下することが一般的です。
評価損には「技術上の評価損」と「取引上の評価損」があり、前者は修理後も機能や外観に欠陥が残る場合、後者は事故歴によって市場価値が下がる場合を指します。
請求の根拠を明確にする
評価損を請求するためには、事故によって実際に損害が発生したことを証明する必要があります。具体的には、事故前後の車両の市場価値や修理費用などのデータを集めることが重要です。特に、事故前に売却予定だった場合、その予定額と事故後の見積もりとの差額を示すことが有効です。
必要な書類の準備
- 評価損を請求する際には、以下の書類が必要です。
- 事故による修理費用の領収書
- 事故前後の車両査定書(日本自動車査定協会などから取得)
- 修理内容や費用についての詳細な説明
保険会社との交渉
相手方の保険会社に対して評価損を請求する際は、交渉が必要です。保険会社は評価損を認めない傾向がありますので、明確な根拠資料を示しながら交渉することが重要です。交渉が難航した場合は、専門家である弁護士に依頼することも検討してください。
弁護士への相談
評価損の請求は複雑であり、専門的な知識が必要です。弁護士に相談することで、適切なアドバイスや交渉を行ってもらうことができ、より有利な結果を得られる可能性が高まります。特に、相手方保険会社との交渉では弁護士の介入が効果的です。
これらのステップを踏むことで、評価損を相手に請求する際の成功率を高めることができます。
裁判例の傾向
しかし、事故があれば、どのような場合でも評価損が認められるとは限りません。
評価損が認められるか否かは、初度登録からの期間、走行距離、損傷の部位、車種等の要素から個別具体的に判断されることになります。
裁判においては、評価損について、肯定否定さまざまな例があるところですが、従前の裁判例の傾向からすると、国産人気車種で初年度登録から5年(走行距離で6万km程度)未満、国産車では3年(走行距離で4万km程度)未満の場合、評価損が認められやすい傾向にあるとされています。
評価損の金額の算定
評価損の賠償金額の相場は、一般的に修理費用の10%から30%程度とされています。具体的には、事故によって車両の価値が下がることを指し、修理後も外観や機能に欠陥が残る場合や、事故歴があるために市場価値が低下することが含まれます。
評価損には主に二つのタイプがあります。技術上の評価損は、修理を行っても機能や外観に欠陥が残る場合に発生します。一方、取引上の評価損は、事故歴があるために車両の市場価値が下落することを指します。特に高級車や外車の場合、評価損が認められやすい傾向があります。
裁判例では、例えば登録後2か月で走行距離約3500kmのBMWについて70万円の評価損が認められた事例や、登録後約3年で走行距離4万3000kmのトヨタ・セルシオについて修理費用の20%相当の評価損が認められた事例があります。
また、評価損を請求する際には、事故前の売却予定価格と事故後の売却見込み価格との差額を基準とする方法もあります。この場合、事故前に売却予定があったことが重要です。
ただし、保険会社は評価損を認めないことが多く、特に示談交渉では難航することがあります。そのため、弁護士に相談し、適切な証拠を用意して交渉を進めることが推奨されます。