第14級9号認定(事前認定)、540万円(和解)の解決事例
・事前認定により、第14級9号(頚部挫傷後の首から肩にかけて常に痛みがある、ひどくなると頭痛が起きる、上を向くと特に首が痛い、右上肢全体が時にしびれる等の症状)の後遺障害認定を受けた件
・裁判において、第14級9号の後遺障害の逸失利益について、基礎収入は役員報酬の50%、労働能力喪失率は5%、喪失期間は5年間を前提とした賠償額の案が提示され、和解が成立した件
- 四輪車同士の事故
- 第14級
- 疼痛等感覚障害
- 神経系統の機能又は精神
- 被害者
- 40代男性
- 当事者の車種など
- 普通乗用自動車 対 普通乗用自動車
- 主な傷病名
- 頚部挫傷、腰部挫傷等
- 後遺障害等級
- 第14級9号
- 弁護士特約
- あり
- 解決方法
- 裁判上の和解
後遺障害の認定手続き
弁護士依頼後の事前認定
第14級9号(首から肩にかけて常に痛みがある、ひどくなると頭痛が起きる、上を向くと特に首が痛い、右上肢全体が時にしびれる等の症状)
自動車を運転する会社役員の40代男性が、自動車に追突される交通事故に遭い、後遺障害の認定サポートを含む損害賠償請求を当事務所に依頼されました。なお、同乗していた妻子の人的損害及び被害車を所有する法人の物的損害についても、損害賠償請求を当事務所に依頼されました。
①後遺障害の認定について、診断書の記載内容をチェック及び意見書の作成等のサポートを行い、第14級9号の後遺障害認定(事前認定)を受けることができました。
②後遺障害の認定後、示談交渉を行ったものの、損害額について双方の主張に大きな隔たりがあったため、裁判を提起し、裁判上の和解により解決しました。なお、物的損害については、示談が成立し、妻子の人的損害は、裁判上の和解により解決しました。
当初の 提示金額 |
解決金額(和解案) | ||
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人的 損害 |
治療費 | 79万5905円 | 79万5905円 |
通院交通費 | 1万5195円 | 1万5195円 | |
休業損害 | 0円 | 102万9000円 | |
傷害慰謝料 | 73万1200円 | 97万円 | |
逸失利益 | 0円 | 155万8584円 | |
後遺障害慰謝料 | 88万円 | 110万円 | |
後遺障害診断書代 | 0円 | 1万0800円 | |
小計 |
242万2300円
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547万9484円
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既払金(任意保険) | -79万5905円 | -79万5905円 | |
弁護士費用 | 0円 | 46万8000円 | |
和解調整金 | 0円 | 24万8421円 | |
162万6395円
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540万円
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①後遺障害認定のポイント
死角である背後から予期せぬ衝撃を受けた事故態様(追突事故)に加えて、通院期間及び回数が多いこと等が、第14級9号が認定されたポイントであったと考えます。
②過失割合のポイント
本件は、運転中に追突された事案であり、被害者の過失がないことに争いはありませんでした。
③損害額のポイント
逸失利益の基礎収入について、労働対価部分として役員報酬の50%が相当であるとの和解案を提示していだくことができました。
会社役員の報酬についての後遺障害の逸失利益は、「労務提供の対価部分は休業損害として認容されるが、利益配当の実質を持つ部分は消極的である」とされています。そして、労務対価部分が報酬に占める割合(寄与率)は、(1)会社の規模・利益状況、(2)当該役員の地位・職務内容、(3)年齢、役員報酬の額、(4)他の役員・従業員の職務内容と報酬・給料の額、(5)事故後の当該役員及び他の役員の報酬額の推移、(6)類似法人の役員報酬の支給状況等が判断の要素として考えられ、これらを総合考慮して個別具体的に判断されることとされています。
本件では、
(1)原告が会社の100%株主にして唯一の役員であり、
(2)会社の利益状況については、4期のうち2期について経常利益及び当期純利益が赤字であること、
(3)他の従業員らの業務と同様の業務に従事している部分が少なからずあるにもかかわらず、原告の報酬が突出していること、
(4)従業員を雇用している自営業者が法人成りをしたにすぎないいわゆる一人会社ではなく、従業員として十数名及び事務員2名を雇用していること
に照らすと、労働対価性に欠ける利益配当部分が含まれているものと考えられました。
一方、
(5)原告が名目的な取締役ではなく、少なからず従業員と同様の業務に従事していること(ただし、事務職員や運転手とは異なる側面も少なからずあると考えられる)
(6)本件交通事故後に報酬を減額していること
に照らすと、労働提供の対価部分についても、少なからず存在するものと考えられました。
原告は、他の従業員が従事する職務と完全に同一ではなく、接客や打合せ、立会、営業、一部の会計処理といった他の業務に従事していており、そのような活動により主要取引先の完全下請けである地位が維持されている側面も少なからずあるから、原告の労務対価部分が他の従業員の平均給与と同額とすることは相当ではないと判断されたことが、労働対価部分として役員報酬の50%が相当であるとの和解案を提示していただくことができたポイントであると考えます。
