第14級9号(右肩関節痛)の解決事例
右肩受傷後の右肩関節痛の後遺障害(第14級9号)について、労働能力喪失期間を10年間、労働能力喪失率を3%(8年)及び5%(2年)とする案が提示され、和解が成立した件
- 単車と四輪車との事故
- 第14級
- 疼痛等感覚障害
- 神経系統の機能又は精神
- 被害者
- 50代男性
- 当事者の車種など
- 原動機付自転車 対 普通乗用自動車
- 主な傷病名
- 右肩鎖関節損傷、外傷性右肩関節周囲炎等
- 後遺障害等級
- 第14級9号
- 弁護士特約
- あり
- 解決方法
- 裁判上の和解
後遺障害の認定手続き
弁護士依頼前の事前認定
第14級9号(右肩関節痛)
50代の公務員である男性が、仕事の帰りに原動機付自転車を運転していた際、交通事故に巻き込まれました。男性は交通の流れに従い、適切に停車していましたが、その時、走行中の車が突然スリップし、コントロールを失って彼の自転車に衝突するという事故が発生しました。この衝撃により、男性は大きな怪我を負い、医療機関で治療を受けることとなりました。
事故後、相手方の保険会社から示談金の提示がありましたが、その内容は非常に不満の残るものでした。提示された慰謝料は、男性が負った怪我の程度や事故後の生活への影響を十分に反映していない低額なものでありました。また、保険会社側は男性の労働能力喪失期間をわずか3年と見積もっており、それでは今後の生活に必要な補償が不十分であると考えられました。男性は公務員として長年勤めており、職務に復帰するまでにかかる時間や、今後のキャリアに与える影響をしっかりと考慮した損害賠償が必要だと感じ、示談には応じられない状況でした。
このような状況を受けて、男性は当事務所に損害賠償請求について相談し、正式に依頼を行うこととなりました。依頼者の現状や事故の詳細をもとに、当事務所は保険会社からの提示内容を慎重に検討し、依頼者が正当な補償を受けるために裁判や交渉に向けた準備を進めることになりました。依頼者が受けた肉体的、精神的な苦痛や今後の生活への影響を適切に評価し、より公正な賠償金の獲得を目指して、法的な対応を進めてまいりました。
示談交渉を行ったものの、相手の保険会社からの回答がわずかに増額をした内容であったため、裁判を提起し、裁判上の和解により解決しました。
当初の 提示金額 |
解決金額(和解案) | ||
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人的 損害 |
治療費 | 128万0339円 | 128万0339円 |
通院交通費 | 8万0430円 | 8万0430円 | |
休業損害 | 108万6568円 | 108万6568円 | |
傷害慰謝料 | 93万6000円 | 152万円 | |
逸失利益 | 95万1024円 | 202万7785円 | |
後遺障害慰謝料 | 32万円 | 110万円 | |
小計 |
465万4361円
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709万5122円
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過失相殺 | 0% | 0% | |
既払金 | -237万8937円 | -237万8937円 | |
和解調整金 | 0円 | 30万0773円 | |
賠償額(既払金を除く) |
227万5424円
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501万6958円
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①後遺障害認定のポイント
依頼者は当事務所に相談される前に、すでに後遺障害の事前認定を受けていました。そのため、当事務所が直接的に認定手続きをサポートしたわけではありませんが、事故の状況やその後の経過を見る限り、認定に至った重要なポイントがいくつかありました。まず、事故の内容として、依頼者が運転していたのは原動機付自転車であり、それに対して加害者側の普通乗用自動車が衝突したという重大な事故であったことが挙げられます。交通事故において、特に車両同士の接触事故では、相手方の車両の大きさや速度が認定において重要な要素となります。また、依頼者の通院期間や通院回数も後遺障害認定に大きな影響を与える要素であり、これらの要素を総合的に考慮することで、後遺障害の等級が決定されます。
②過失割合のポイント
今回の事故は、依頼者が原動機付自転車で停止している状態で、加害者側の車両が衝突してきたというものであり、依頼者には全く過失が認められない、いわゆる「もらい事故」に該当します。過失割合を決定する際、被害者が停止中であった場合は、被害者側に過失がないと判断されるのが一般的です。本件でも、依頼者が停止中であったことが明白であり、被害者の過失が0%であることについては特に問題なく認められました。過失割合に関する争いがなく、被害者に全責任がないことが確定しているため、損害賠償請求において有利な立場に立つことができました。
③損害額のポイント
本件においては、依頼者が事故により負った怪我が、単なるむち打ち症とは異なるものであることが重要なポイントとなりました。むち打ち症の場合、他覚的所見がない場合も多く、その場合には慰謝料の額が低く抑えられることが一般的です。しかし、本件では他覚的所見が認められ、依頼者が負った怪我の重大性が十分に証明されたため、152万円の傷害慰謝料が提示されました。これにより、依頼者が事故によって受けた苦痛に対する適切な補償が確保されました。
また、逸失利益についても重要なポイントがありました。依頼者は公務員であり、事故後も実際の収入に減少が見られなかったことから、減収を理由とした逸失利益の請求は行われませんでしたが、公務員としての職務の内容や今後のキャリアに与える影響については慎重に評価されました。特に、事故による後遺障害が依頼者の昇給や昇進、さらには将来的な転職において不利な影響を与える可能性があることが指摘され、これを考慮した結果、労働能力喪失期間は10年、労働能力喪失率は3%(8年)および5%(2年)とする和解案が提示されました。これにより、依頼者は将来にわたる生活の安定を確保するための賠償を受けられる見通しとなりました。